サービスを選ぶ

AI と機械学習のサービス

社員が業務で AI を使うなら Gemini Enterprise、自社のアプリに AI を組み込むなら Gemini Enterprise Agent Platform、画像の分類や文字起こしのような定型の処理なら事前構築済みの API を選びます。独自のモデルを学習するときだけ、Agent Platform Pipelines と AI Hypercomputer の出番になります。

Google Cloud の AI のサービスは、誰が使うかと、どこまで自分で作るかで選びます。要件を満たすなかで、自分で作るものが一番少ないものを選ぶのが基本です。自前でモデルを学習するのは、既製のモデルで精度が足りないと分かってからです。

試験ガイドはこの範囲をセクション 1.3、2.4、2.5 に置いています。製品名が大きく変わった範囲なので、このページの名前は 2026 年 10 月時点の公式ドキュメントに合わせています。

Gemini Enterprise社員が使う完成品事前構築済みの APIVision、Speech-to-TextGemini Enterprise Agent PlatformModel GardenADKエージェント開発Agent Runtime学習TrainingPipelinesModel RegistryAI HypercomputerGPU、TPU、消費モデル
上の層ほど自分で作るものが少ない。独自の学習は、中の層の Agent Platform で組み、下の層の GPU や TPU で動かす

試すAI のサービスの選び方

誰が、何に使うか
どこまで自分で作るか

選ぶもの: Agent Platform の Gemini と Agent Development Kit

  1. Gemini Enterprise自分で持つもの: ライセンスの割り当てとデータソースの接続
  2. 事前構築済みの API自分で持つもの: API を呼ぶコード
  3. Agent Platform自分で持つもの: プロンプト、エージェントの設計、つなぐデータ
  4. 独自の学習自分で持つもの: 学習データ、学習の手順、モデルの監視

自社のアプリに生成 AI やエージェントを組み込むなら、Agent Platform で Gemini を API として呼ぶ。インフラは持たず、プロンプトとエージェントの設計に集中できる

Gemini Enterprise Agent Platform は開発者の基盤

公式ドキュメントは Agent Platform を、AI エージェントとモデルを使ったソリューションを作り、デプロイし、統制し、最適化する統合プラットフォームと説明し、Vertex AI から発展したものだと書いています。Vertex AI と書かれた解説の多くは、試験ではこの名前で出ます。

機能役割
Model GardenGoogle のモデル、他社のモデル、オープンモデルを選ぶ入り口
Agent Development Kit (ADK)エージェントをコードで作るフレームワーク
Agent Studioエージェントの流れを画面で組むローコードの道具
Agent Gardenすぐに動くエージェントのテンプレート集
RAG Engine、Vector Search社内データをモデルにつなぎ、回答の根拠にする
Agent Runtime作ったエージェントを動かす実行環境

試験ガイドの 1.3 に出る Agent Builder は、現行のコンソールでは Agent Platform の左メニューの区分の名前で、Agent Garden はその中から開きます。Agent Builder と問われたら、Agent Platform でエージェントを作る道具の話だと読んでください。

Model Garden には Gemini、画像生成の Imagen、動画生成の Veo、オープンモデルの Gemma、Anthropic の Claude、Llama などが並びます。Gemini はマネージドの API で、テキスト、画像、音声、動画をまとめて扱えるので、特別な制約がなければまず Gemini を検討します。オープンモデルを選ぶのは、重みを自分で持ちたい、自分のエンドポイントで細かく調整したいときで、その計算資源は自分で払います。

独自の学習は Pipelines で自動化する

Agent Platform Pipelinesデータ準備学習Training登録Model Registry推論エンドポイントML Metadataパラメータと成果物を記録
手順をパイプラインにすると、新しいデータで同じ手順を再実行でき、どのデータからどのモデルができたかを ML Metadata で後から示せる

Agent Platform Pipelines は、Kubeflow Pipelines か TensorFlow Extended (TFX) で書いたパイプラインをサーバーレスで実行します。特徴量を学習と推論で共通にしたいときは Agent Platform Feature Store を使います。要件に「新しいデータで定期的に再学習する」「どのデータで学習したかを監査で示す」とあればパイプラインの案を選び、ノートブックで手動で回す案は外します。

AI Hypercomputer は AI 向けのインフラをまとめた製品群で、GPU と TPU などのインフラ、最適化した PyTorch、JAX、TensorFlow と GKE や Slurm (Cluster Director 経由) などのソフトウェア、計算資源の確保と支払いの方法 (消費モデル) を垂直に統合したものです。割引率は 2026 年 10 月時点の消費モデルのページの記載で、対象のマシンシリーズに限られます。

消費モデル向いているワークロード途中で回収されるか料金
オンデマンド推論、サービング、試作されない標準料金
Spot中断されても再開できるバッチ処理いつでも最大 91% 割引
Flex-start最大 7 日の短い学習やバッチ推論で、空きを待てるされない最大 53% 割引
カレンダーモードの将来の予約開始日を決めた最大 90 日の分散学習されない最大 53% 割引
キャパシティブロックの将来の予約基盤モデルの事前学習のような長期の大規模学習されない確約利用割引で最大 53%
標準の予約確実に容量が要る本番されない標準料金。確約利用割引を併用できる

TPU は大きな行列演算に特化していて、JAX などで大規模に学習するときの候補です。既存のコードが CUDA に依存しているなら GPU を選びます。推論が小さく、リクエストがないときは止めたいなら、NVIDIA L4 などの GPU を付けて 0 インスタンスまで減らせる Cloud Run も候補です。

Gemini Enterprise は社員がそのまま使う

Gemini Enterprise は、公式ドキュメントの言葉では社内検索、AI アシスタント、エージェントのプラットフォームです。Microsoft SharePoint、Jira Cloud、Confluence Cloud、ServiceNow などのコネクタで社内データを横断で検索でき、Agent Gallery のエージェントや自社で作ったエージェントを社員に使わせられます。開発者が作る基盤の Agent Platform に対して、こちらは完成品です。

試験ガイドの NotebookLM は、渡した資料 (PDF、Google ドキュメント、Web ページなど) に基づいて要約や回答をする調査用の道具で、Google Cloud の企業向けドキュメントでは Gemini Notebook Enterprise という題名です (URL のパスは notebooklm-enterprise)。データは自社の Google Cloud プロジェクトに置かれ、外部と共有できないので、「機密の資料だけを根拠に答えさせたい」ならこれを選びます。

事前構築済みの API は処理が決まっているときに使う

処理サービス
画像のラベル付け、OCR、ロゴやランドマークの検出Cloud Vision API
音声の文字起こしCloud Speech-to-Text
文章の感情分析、エンティティ抽出、分類Cloud Natural Language API
自社のサイトや文書を対象にした検索、推薦Agent Search (Vertex AI Search から名称を変更中)

画像や動画の生成 (Imagen、Veo) は Model Garden のモデルとして使います。動画の分析に使われてきた Video Intelligence API は非推奨で、ドキュメントは Gemini への移行を勧めています (Video Intelligence API のドキュメント)。AI の保護 (Model Armor、Sensitive Data Protection) はセキュリティの設計で扱います。

試してみる

Cloud Vision API で、公開されているサンプル画像にラベルを付けます。Cloud Shell で実行してください。呼び出しは数回なので、無料トライアルのクレジットで足ります。

gcloud services enable vision.googleapis.com

curl -s -X POST \
  -H "Authorization: Bearer $(gcloud auth print-access-token)" \
  -H "x-goog-user-project: $(gcloud config get-value project)" \
  -H "Content-Type: application/json" \
  https://vision.googleapis.com/v1/images:annotate \
  -d '{"requests":[{"image":{"source":{"imageUri":"gs://cloud-samples-data/vision/label/wakeupcat.jpg"}},"features":[{"type":"LABEL_DETECTION","maxResults":5}]}]}'

labelAnnotations に、猫に関するラベルと 0〜1 のスコアが返ります。LABEL_DETECTION を TEXT_DETECTION に変えると OCR も試せます。モデルの選定も学習もせずにこの結果が得られることが、事前構築済み API を選ぶ理由です。

後片付けとして、API を無効にします。

gcloud services disable vision.googleapis.com

試験で問われる判断

このカリキュラムで作った例です。

「コールセンターの通話を文字起こしして要約したい。ML の専門家はいない」なら、Cloud Speech-to-Text で文字起こしし、Gemini で要約します。音声認識のモデルを自前で学習する案は、専門家がいない条件に合いません。

「製造ラインの画像から自社製品に固有の不良を検出したい。汎用の画像 API では精度が足りなかった」なら、Agent Platform で自社の画像からモデルを学習し、再学習を Agent Platform Pipelines で自動化します。

「数日で終わる微調整を GPU で走らせたい。開始は遅れてもよいが、途中で止められるのは困る」なら Flex-start です。Spot は途中で回収されることがあり、標準の予約は使わない期間も払います。

ここでサービスを選ぶ章は終わりです。次の章では、Well-Architected Framework で設計を評価します。

理解度チェック

答えを開く前に、自分で考えてください。結果はこのブラウザにだけ残り、間違えた問題は復習のページでまとめて解き直せます。

思い出す

Google Cloud の AI のサービスは、どんな 2 つの軸で選びますか。その軸のうえで、どれを選ぶのが基本ですか。

状況で選ぶ

営業資料や議事録が SharePoint と Confluence に散らばっていて、社員がそれを横断して検索し、要約させたいと考えています。社内に開発チームはなく、なるべく早く使い始めたいです。どれを選びますか。

説明する

製造ラインの画像から、自社製品に固有の不良を検出したいとします。汎用の画像 API では精度が足りませんでした。どう進めますか。学習の手順をノートブックで手で回すのではなく、Agent Platform Pipelines にするのはなぜですか。

章末の確認

「サービスを選ぶ」の章と、1 つ前の章の問題を混ぜています。分野が入れ替わっても選べるかを確かめます。

状況で選ぶ

毎晩、数百本の動画をエンコードします。処理は途中で止まってもやり直せ、翌日の昼までに終わればよく、費用はできるだけ抑えたいという要件です。エンコーダは、OS に特定のカーネルモジュールを読み込まないと動きません。どれを選びますか。

出典: コンピューティングの選び方
状況で選ぶ

無料トライアル中の学習用プロジェクトに、1,000 円の予算アラートを既定の設定のまま作りました。2 週間で VM と BigQuery をかなり使ったのに、通知が 1 通も届きません。原因として最も考えられるのはどれですか。

出典: 学習用の環境を作る
状況で選ぶ

日本、米国、欧州に店舗を持つ小売の会社が、在庫を 1 つの DB で管理します。どの国の店舗から見ても常に最新の在庫数を返し、在庫の引き当ては各国の店舗から書き込みます。どれを選びますか。

出典: ストレージとデータベースの選び方
状況で選ぶ

ある会社は、営業と物流の部門ごとにフォルダを作り、それぞれの下に本番と開発のプロジェクトを置いています。セキュリティ部門は、全社の本番環境でだけ外部 IP を持つ VM を禁止し、これから増える本番プロジェクトにも漏れなく効かせたいと考えています。どうしますか。

出典: リソース階層と請求
状況で選ぶ

オンプレミスの Hadoop クラスタで、Spark のバッチジョブが 200 本、毎晩動いています。開発チームは Spark に慣れていて、移行の期限が近いのでコードはほぼ変えたくありません。結果は BigQuery で分析します。加工はどこで動かしますか。

出典: データ処理と分析
状況で選ぶ

VM で動くアプリが、Cloud Storage のバケット 1 つにファイルを書き込みます。開発者は VM を既定の設定で作り、アプリは問題なく動いています。セキュリティ監査で、最小権限にするよう指摘されました。どう直しますか。

出典: IAM の基本
状況で選ぶ

SaaS を運営する会社が、多数の顧客の VPC から自社の API 1 つだけを内部 IP で使わせたいと考えています。顧客は別の会社で、VPC の IP 範囲は顧客ごとに決まっており、自社の範囲と重なる顧客もいます。どうつなぎますか。

出典: VPC の設計
状況で選ぶ

地方のデータセンターと Google Cloud の間で、20 Gbps の帯域が要ります。データセンターは Google の接続拠点がある施設から遠く、自前の回線は引けません。99.9% の SLA も求められています。どう接続しますか。

出典: オンプレミス・マルチクラウドとの接続